「ちょ、ミユお前…いい加減にしろよ」


これまで何も言わなかった彼が口を開いたのはそのタイミングだった。




「え、私?」


美優さんが自分のことだと驚いた様子だったけど、今彼が呼んだ『ミユ』は私のことだと思う。


さっきまで『深雪』と呼んでたくせに、相当怒ってるのか呼び方がいつも通りに戻っていた。




「さっきから聞いてたら何勝手なこと言ってんの?」


けどそんなことすら気にしてないのか、佐伯くんは私にさらに詰め寄る。




聞きなれない低い声に、見慣れない怒った顔。


初めて自分に向けられたそれに、足が震えた。