でも。 「そんなんじゃないから」 それよりも先に、彼がそう言うから何も言えなかった。 ズキン、と重くなる心。 …傷ついちゃダメ。 誰だって、好きな人に他の人と付き合ってるなんて知られたくないもの。 だから、笑え、私。 「え…?そうなの?てっきり彼女かと…」 「や、あ、いや…」 「そうなんですよっ。同じ大学なんです。たまたまバッタリ会って、私が誘ったんです」 佐伯くんが私に気遣ってくれたのかフォローを入れようとしてくれたみたいだけど、私はその言葉を遮ってそう言った。