でも、私は安斎くんよりもその後ろにいる人の方に目が奪われていた。
そのブラウンの髪に、ふわりと香るフゼアの香り。
そこにいるのは間違いなくーーーーー佐伯くん。
「こ、こんにちは」
「…こんにちは」
あのことがあったからか、少し気まずい気がして小さな挨拶しかできなかった。
「あっ!そういや悪かったなこの前。奏多のヤツ何も言わずに帰っちゃってさ!あの合コン、奏多の失恋会でもあったのに主役が先帰っちゃ……「おい、克哉!」
そして突然ペラペラと話し出した安斎くん。
その言葉を慌てて遮った佐伯くんだけど、私にはもう聞こえなかったフリができなかった。



