「すまん、彼女と名前間違えた!」 申し訳無さそうに謝る彼にはいはい、と軽く流す。 彼が名前を間違えるのは毎度のことだ。 「いやー、でも毎回悪いな。彼女とのデート場所決めるのに付き合わせてさ」 「そんなこと気にするような人だったんだ?」 笑みを含めた声色、心は泣いているのにね。 もしかしたらあたし、女優になれるかも。 カバンに忍ばせたあたしには甘過ぎる紅茶にそっと指を這わす。