「あつっ」


頬に当てられたものにあたしは悲鳴をあげた。


誰よ?なんて言いながら振り返るけど相手なんてわかりきってる。


「それ、結構熱いんだけど」


眉間にしわを寄せたあたしと対称的に彼はしたり顔だ。


「まあまあ、俺のおごりの紅茶でも飲みなさい、甘いの好きなんだろ?」


「…まあね」


差し出された紅茶は飲まずにそっと両手で包み込んだ。


じんわりとした温かさが冷えた手のひらに伝わっていく。


「ここの夜景いいなー、ここで決定だ!」


満足げに車にもたれながら彼はコーヒーを飲み干した。