チョコよりクッキー



それからすぐにテスト期間に入って慌ただしくなり、落ち着いたのは、学年末テストの終わった、3月に入ってからだった。


テストも終わり、少しゆったりとした時間が流れた。


そうして、ホワイトデーの日。

男子たちからのお返しに、女子たちはどこか嬉しそう。

私も、何人かにお返しを貰った。
だけど、その中に真也のものはなくて。
それでも、明日持ってくる予定なのかなとか、期待しちゃう自分がいて。嫌になる。


もう、完全に失恋したようなものなのに。


でも、私、また見ちゃったんだ。

真也が、他の女の子にお返しあげてるとこ。


その中には同じクラスの子もいたのに、私は貰えてない。


私……、嫌われてる……?


今まで、そんなこと考えもしなかった。
恋愛感情で、好きになってくれてるんじゃないかなんて、淡い期待を抱いてたくらい。人としては、嫌われてないと思ってた。


なのに……、それすらも違うの……?

好かれてもないの?


ちょっとのことでもすぐに不安になってしまう。


恋が、私を臆病にする。



放課後になっても、真也からお返しは貰えなくて。
諦めて帰ろうとしたところに、他のクラスの友だちがやって来て、お返しをくれた。
その子と少し話してるうちに、教室内には誰もいなくなっていた。

……真也、帰っちゃったんだ……。

やっぱり、私、嫌われてるのかな。
気持ちが沈む。

しょうがないと自分に言い聞かせて、今度こそ帰ろうとすると。

「よっ!」

真也が教室に入って来た。

「あれ?忘れものでもしたの?帰ったと思ってたのに」
「会話終わるの待ってた」

会話って、私の?
待ってたって、私を?

「え、ごめん。私に用事あった?」

本当はドキドキしてしょうがないのに。
必死に普通なフリして聞いてみる。

「うん。これ」

見えないように後ろに隠して持ってたのか、私の前に、可愛い紙袋が差し出された。

「バレンタインのお礼」

優しく笑ってくれる彼に、胸がギュッと痛くなった。


……ちゃんと、くれるんだね。

私の勘違いだったんだね。

そうだよね。真也は、優しい人だもん。
誰か1人にだけ返さないなんて、そんなことするわけないよね。