バレンタインも目前に迫り。
今年はちゃんと材料を買い揃え。
ラッピングもしっかり用意して。
準備は十分。
残るは、作るだけだった。
それなのに私は見てしまった。
ねぇ、真也。
よりを…………、戻すの…………?
学校から帰ろうとした私が見たのは、女の子と楽しそうに話しながら下校する真也の姿。
その子、真也の元カノでしょ…………?
真也と一緒にいた女の子は、高校に入ってすぐに別れるまで、中学からずっと付き合っていたらしい、真也の彼女だった。
笑った顔がすごく可愛い。
そんな印象の、女の子だった。
家に帰って、私はキッチンの椅子に座って。
テーブルの上に置かれたチョコの材料の入ったビニール袋を眺めた。
浮かんでくるのは、さっきの真也の顔。
私、真也のあんな顔、見たことなかったよ。
あんなに幸せそうな顔で笑うんだね。
知らなかった。
……知らなかったよ。
真也。
あの子が、まだ好きなの?
また、付き合うの?
ううん。もう、付き合ってる……?
この時期に一緒に帰ってるなんて、きっとそういうことだ。
だけど、認めたくない。
嫌だよ。私。
私には、もう、何の希望もないの……?
それから、いつもみたいに軽いノリで話しかけて。
元カノとよりを戻したのか、聞こうとした。
だけど出来なかった。
怖くて。
聞いて、もしあの幸せそうな顔で肯定されてしまえば、私はもう立ち直れない。
本人の前で、泣いてしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。
そんなみっともない姿、好きな人に見せたくない。


