「ねえねえ。今年どうするー?」
「何作ろっか」
「どのくらい作ればいいかな?」

2月に入ってから、教室内でこんな会話が増えた。

バレンタインがすぐそこに迫り、楽しそうに会話する女子たち。
みんな、友チョコの話ばかりだけど。多分本当は本命に渡すんだろうな。
もちろん友だちにもあげるだろうけど。やっぱり、1番気合を入れて、本命チョコを作るんだろうね。


「どうせお前は彼女に貰うんだろー」
「どうせお前は今年も誰にも貰えないんだろ」
「うっせ」

盛り上がるのは男子も同じらしく。
嫌味を言われてもどこか楽しそうに会話してる。

ただ単に、チョコが欲しいっていう男子も多いだろうけど。
やっぱり、本命の相手からのチョコ、狙ってるのかなー。


2月は、それぞれに勝負の月らしい。



ふと、私もある男子に目を向けた。

友だちと楽しそうに話してる真也(しんや)。

私は彼が、1年のときから好き。

中学は違うところで。高校に入ってから彼のことを知った。
そして、気づいたら好きになってた。
はっきりいつかは覚えてない。
いつの間にか、目で追うようになって。話せるだけで嬉しくて。


気づいたときにはもう、完全に恋だった。


わりと向こうから話しかけてくれることもあって。
他の女子とはそこまで仲良くないから、密かに期待してしまってる。
もしかしたら、向こうも…………って。
たったそれだけのことなのに、期待せずにはいられない。

恋は盲目。
その通りだと思う。
ただの勘違いかもしれないのに、彼からの視線を感じて、いつも意識してる。


ねぇ、真也。
私、あなたが好きです。


今年こそ、伝えてもいい……?