「美華、せっかく家族で食事をしてるんだから敬語なんて使わないでいいじゃない。」

一応、仕事上では上司に当たる父に普段から敬語を使うようになったのは、私の小さな反抗心だ。

「仕事中に父さんって呼んだら周りから白い目で見られるから、止めておきます。」
「どちらでも構わないが、今日美華を呼んだ理由を話そう。」

その時が来た、か。

「お見合いをしなさい。」

やっぱり、という思いが大きかった。

「お相手は、どちらのお家ですか。」
「分院建設の時に世話になった方の息子さんだ。うちにとっても申し分ない。写真もあるが。」
「いえ、見なくて大丈夫です。その方とお見合いすれば良いんですね。」

父が写真を出そうとするのを制し、話を続けた。