高級マンションにタクシーが停車して、あれよあれよと手を引かれる。

いつもの私の速度に合わせてくれる恵介じゃない。

部屋に入ると、ドアに背を当てられた。

途端、唇に重なる温もり。

「んっ、ちょっ。」
「ずっと我慢してたんだ。もう限界だよ。」

重なるだけだったキスが、しだいに深くなっていく。

息継ぎさえできない。

トントン、と恵介の胸を叩くけれど一向に離れる気配は無く。

やっと呼吸ができた頃には酸欠で死ぬかと思った。

靴を脱がされ、連れられたのは恵介の寝室だろう。

「美華。良い?」
「いや、あの。私...」

返事を終える前に押し倒されて、気づけば目の前には恵介の顔。

「って聞いたけど、我慢できない。」

首筋を這う舌にくすぐったさを感じる。