「美華を手放すなんて出来ないって思っても、美華の親に認めてもらわなきゃ結婚出来ない。
だけど美華が幸せにならない結婚をするなら、その相手は俺で良いじゃないかって。


恵介の手が握るのはお酒ではなくココア。
そのカップをぎゅっと握った。

「俺が倒れる前に話してたこと、覚えてるか?」

...そうだ、恵介が倒れたことで忘れていたけれど、大事なことを言われていたんだ。

「『俺が、結婚相手でも良いじゃないか』って言ったよな。あれは本心だよ。
気分が悪くて無意識に近かったけど、俺が美華を幸せにするって思った。」

でも、と弱々しく吐き出す。

「美華にさよならって言われたときは、世界が真っ暗になるってこういうことかって思ったよ。
美華に会えなくなってから営業成績がた落ちだ。」

ははっと自虐的に笑うけれど、私は。そんな凄い人じゃない。