「それじゃ、後はお二人でお話してみてはどうですか?」

出会ってから40分程経過した頃、突然母がそう言葉を発した。

「そうですね。私たちは退散しましょうか。」
「ではごゆっくり。」

二人が席を立ってから数十秒。
時間にすれば短いはずなのに、私には酷く長く感じられた。

「ごめんなさい。」

沈黙に耐えきれずに謝ってしまった。

「ごめんって、何に?
言い逃げしたこと?
俺の気持ちを無下に扱ったこと?
それとも、この見合いを断るつもり?」
「...ごめんなさい。」
「俺は言いたいこといっぱいあるよ。でもその前に、今日来てくれてありがとう。」

「...え?」
「見合いだよ、引き受けてくれてありがとうってこと。
まあ美華のことだから、相手のことなんて知らないまま来たんだろうけど。」

もちろん、恵介だとは知らなかった。
知っていたらこんなに驚くこともなかった。