ココアの甘さ

恵介の顔を思い出すと必ず、病室で彼に別れを告げたときの表情が目に浮かぶ。

止めて、そんな悲しそうな顔をしないで。
そう言ってしまいたくなる程に歪んだ顔。

そして、部屋から出ていくときの泣いてしまいそうな顔。

何を思い出そうとしても、最後にはあの日に戻る。

おかしいよね。あんなに笑いあったはずなのに。

恵介の仕事へ向ける真っ直ぐさに。
軽く微笑んだ時に下がる目尻に。
照れたときの、恥ずかしそうな顔に。


その全てに私の心は奪われてしまったんだ。