「...嘘でしょ、恵介。」
「きゅ、救急車を呼びますか!?」

マスターが慌てて、電話をかけてくれる。

「お願いします。」

嫌な予感が、当たってしまった気がする。
なってしまったことは仕方がない。すぐに頭を切り替える。

彼の首に手を当てて、総頸動脈で脈を計る。
大丈夫、心配停止は起こっていない。

どうして、あなたが。

足を少し上げ、血の流れを頭に向かわせる。
ただの貧血なら、すぐに意識が戻ることが多い。


けれど彼の意識は救急車が到着しても戻ることはなかった。