彼の顔はテーブルを向いていて、私も彼の方は見ない。

「そんなので、幸せになれるのかよ。」

弱々しい声で、彼が呟く。

「私の幸せは結婚に必要ないの。」
「だったら!」

突然、恵介が大きな声を出して立ち上がった。

「ちょっと、周りに迷惑だから座って。」
「俺が、結婚相手でも良いじゃないか!」

彼の発言に驚いたのも確かだ。

けれど、それよりも苦しそうに私を見下ろす彼の目が、突然閉じたのを見過ごせなかった。

バタン、という音で彼が倒れたことに数秒遅れて気がついた。

「ちょっと、恵介!?」

倒れたまま動かない彼は意識がなかった。