振りかえると、バッシュを持った橋田先輩が立っている。



「具合悪そうだけど、何かあった?」



橋田先輩と話をするのは初めてだから、話しかけられたこと自体に少々戸惑ってしまう。



しかし、光輝は橋田先輩の部活の後輩でもあるんだから、今起こっていることをきちんと話さなくてはいけない。



「光輝が……事故にあったって連絡が……」



「秋元が!?」



「病院に行かなきゃいけないから、今日の部活はお休みしま……」
「もしもし、タクシー1台お願いします。駒修大の正門前、泉田です。女の子が乗ります」



思わず顔を上げた。



橋田先輩は私の言葉を遮り、電話をかけている。




「その様子だとまだ車呼んでなかったよね?とにかく、容態が分かるまでは余計な心配はしない方がいい。悪い方にばかり考えが進むから。とにかく今は早く行ってあげて。結果が分かったら森本を通して教えて!」




私が床に落とした鞄を拾い、肩を叩いて送り出してくれた。



「橋田先輩ありがとうございます!」



先輩の言う通りだ。



今は心配するより、病院に向かう方が先決だ。



それにしても、さすが未央の選んだ彼氏。



鮮やかにかっこいいとこ見せてくれちゃって、と少しだけほくそ笑み正門に向かって走った。







しかし、病院に着くまでの長く、終わりなんか来ないんじゃないかと思えた。




橋田先輩からアドバイスを受けたばかりだというのに、頭をよぎるのはどんなに頑張っても最悪な映像ばかり。



光輝!



お願いだから生きていて!



また憎たらしい笑顔を見せて!