呼び出された場所に着いた。
あたりを見回しても誰かいる気配がなかった。
ちょうど自動販売機が近くにあってのどが渇いてた俺はてきとうに炭酸飲料をかった。
「あ、あのっ」
ベンチに座ってそれを飲んでいると黒髪の女子が声をかけてきた。
頬を赤く染め立ちつくしているその子。
「座れば?」
「い、いえっ…!」
激しく首をふって遠慮しがちにあとずさりする。
俺が近づくのがイヤなのか…?
ならなんで来てんだよ。
少しイラッとした。
それでもなんとか自分を抑えて話しかける。
「あの、呼び出したのってキミ?」
「は、はい…」
「用事は?」
「え、えと…、一目見たときからずっと気になってて…あの、わ、わたしと…付き合ってくださいっ」
どんな顔して話してるんだろうと思って顔をあげてみた。
すると、その子の手はとても震えていた。
相当緊張していたんだろう。
声までもが震えてたからな。
勇気出して告ってくれたのにごめん。
俺は今のキミに優しい言葉をかけてあげることはできない。
「ごめん」
「ど、どうして…ですか、?」
「好きなやつがいるから」
「そ、そうなんですか…」
「あぁ。だから、ごめん」
「い、いえ…。でも、少し羨ましいです。遥斗くんに好きだって言ってもらえるその子のことが」
目に大粒の涙を浮かべてそう言う女の子。
「じゃあ、俺は教室に戻るよ」
「はい。ありがとうございました」
くるりと向きを変えて走っていく女の子。
パタパタパタ…。
女の子が帰って行くときに聞こえたもうひとつの足音。
そのときはたいして気にも留めていなかった。
教室に帰った俺は玲に結果を話し、席についた。
ぼーっと窓の外をながめているとメールが入ってきた。
from: 玲
やっほ☆
ひとつ伝えとくね?
俺みたよ?いつも一緒にきてる女の子がお前が呼び出された場所の方から走ってきたの。
もしかしたら聞かれたんじゃない?
じゃ!
俺は思わず教室を飛び出した。
