がたん、ごとん…


春の電車は、なんとなくおだやかだ。


進級からもうすぐ1か月、窓の外の桜は真っ盛り。


季節ごと揺らしているような空気を感じながら、

あたしは、破れた恋を嘆く。



「入学したときから好きだったのにー…」

しーん。


「彼女がいるなんて知らないよ…」

しーん。


「しかも即答でごめんって…
少しは悩んでくれてもよくない…!?」

しーん…


「…ちょっと。なんか反応してよ、伊織」

一人でしゃべってるみたいじゃん、と言うと、


「実際そうじゃん…もう聞き飽きたし」

葉山伊織 (ハヤマ イオリ) は、やっと声を発した。