『…ど、どなたですか?』

『……覚えてないんだ。』

『…え?』

『なんでもない。妹さん、待ってるんじゃない?』

『…今日はいいんです。一緒に帰る気分じゃなかったし。』











私はそこにあるベンチに腰掛けて、
鞄の中からチョコを取り出した。








『…食べます?』

『…』

『別に毒盛ったりとかしてませんから。』









口にチョコを放り込むと、落ち着く。
昔から、チョコが大好きで。








『…じゃあ1つちょうだい。』

『……はい。』









1粒渡すと、迷わず口に放り込んだ。









『…あの、名前聞いても、いいですか?』

『聞いたら君が後悔するから、整理がついたら言うよ。…今はとりあえず、名無しさん、で。』

『…名無し、さん?』

『電車きたよ。』

『あ、』









ふと見ると、もう反対方面の電車に乗っていて、話しかけることもできなかった。