入ってきた面々は、ケイタを見て驚いた顔をした。
まるで化け物を見るような目つきで見られ、ケイタは少し不快な気持ちが胸をうずまいた。

「あ、こいつは間宮ケイタだ。これから俺たちの仲間になる」

気まずい雰囲気をやぶったのは上野だった。

「あ、あぁ、そうか」
ははは、とひきつった笑いが保健室に広がる。

「あ、かわ、しま・・・?」
後から入ってきた3人の中に見知った顔があった。
名前があっているかわからないので少し控えめに言ってみる。

川嶋ますみ。
確かケイタと小学校が一緒だった。
いつも成績は学年トップで、ルックスも性格もいいということで女子に騒がれている。
昨日見たクラス表の中に川嶋の名前があった気がする。

「そうか、間宮は川嶋と同じクラスだったよな」
「間宮、小学校も一緒だったんだから名前くらいちゃんと覚えといてくれよ」
「それより、間宮と話すのは初めてだよな。よろしく」

ごつい胴体をした、渡部たかしが言った。
とても同じ中2には見えない。
でかいが、友達思いでいいヤツだと上野は言った。

本当にそうかもしれない。
ケイタは渡部から差し出された手をにぎった。
そして、その横にじっとこちらを見ている小柄な少女に気づいた。

「あ、この子は北野ゆりかだよ。いろんな声が出せるんだ」
さとこが変わりに紹介してくれた。
「将来は、声優になりたいんだ」
メガネをかけたゆりかという少女は、ちいさな顔いっぱいに太陽のような笑顔をみせた。

「で、どうして上野は間宮をここへ連れてきたんだ?」
「それがさ、結構すごいヤツなんだぜ、こいつ・・・」
そう言って、昼休みのこと、放課後のことなどを話し始めると、途中でみんなで笑ったり、ケイタをからかったりしてはじめて緩やかな雰囲気がながれはじめた。
ピンと光を持った糸が、やっとゆるく、やわらかくなった瞬間だった。