桃色アルバム

「ゆりかってさ」

ケイタはふと、疑問に思ったことを聞いてみた。

「俺が見てるとこでは、さとことばっかいるじゃん。ほかに友達いねーの?」
言ってから、自分が言うのもおかしいか、と思った。
でも、ゆりかは見る限り人なつっこそうな顔をしている。
それがケイタには不思議だった。

「いるよ。でも、正直のとこ、さとこってちょっと・・好かれないタイプなんだ。ほら、さとこの言うことは正しいけどなんかキツイじゃん。気も強いし、そんなとこがダメみたいだね」
私は好きなんだけどな、と空を仰ぐゆりかの横顔をケイタは見つめた。

ケイタも、さとこの自分の意見をはっきり言うところが好きだ。
だけどゆりかの言うとおり、少し強情すぎるかもしれない。

「でもさとこって、すごいんだよね」
「なにが?」
「さとこは、ひとりぼっちでも堂々としてるんだよ。孤立してても全然気にしてない。あたしだったら、そんなのムリだな。きっとひとりで小さくなってる」
「あぁ・・そんな感じ」

ふたりで顔を見合わせ、プッとふきだした。

「このことは、さとこに内緒だね。あの子ほめられるの苦手だから」
「ゆりかは違うけど、俺なんか殴られそうだからな」
あのときの痛みを思い出し、腹をさする。
そんなケイタを見ながらゆりかは言った。

「なんか、間宮って頭の中にあるイメージと全然違うや。人のほんとの姿を知るって、おもしろいね」
「そう?」
「そうだよ。あ、ほら、ここ。ちゃんと道覚えときっ」

そう言って、基地の中に走っていった。
小さくなっていくゆりかの背中を見ながら、ケイタはぼそりとつぶやいた。

「やば、また話に夢中になって道おぼえてねーや」

まぁいいか、とケイタはゆりかの後を追いかけた。