四月。


季節はずれの春の雪がひらひらと舞い落ち、道を桃色に染める。
落ちてすっかりひらべったく、茶色くなった花びらの上を多くの人々の足が通り過ぎる。






舞っている花びらには見とれるが、落ちてしまった花びらには目も向けない。
そんなところは人間の世界にそっくりだと、ベンチに座っていたケイタは思った。






間宮ケイタはちょうど昨日から中学二年だ。前を通り過ぎる生徒を見ながらぼんやりしている。
ケイタは自分から話そうともしない、静かな少年だった。
元は明るいのだが、友達をつくる気にもなれない。
テレビゲームやカードゲーム、サッカーなど今の中学生ならハマりそうなものが、ケイタにとっては物足りなく感じる。もっと刺激がほしい。もっとドキドキしたりわくわくしたい。






それがケイタの思いだった。

(なんで俺のまわりはあんなやつらばっかなんだ)

先日、カードゲームで騒いでいた同級生のことを思い出す。





そのとき、遠くで始業の鐘が鳴った。



尻をあげようとするが、それさえも重く、また座りなおしてしまった。


―・・・だるい




これは、生徒の大半が思っていることだ。
ケイタも同じだった。

ケイタの場合は、人以上にその気持ちが強いが。




だが、ケイタがひとり騒いでもどうにもならない。

どうあがいても、学校へ行くほかないのだ。

また深くため息をつき、腰をあげ、のろのろと歩き出した。