桃色アルバム

そのとき。

ガラッ、と大きな音をたててドアが開いた。
カバが、不機嫌な、それでいて青い顔をしてドスンドスンと入ってくる。

バン、と出席簿を教卓にたたきつけると大声を張り上げた。

「本をしまえ!!!」
「先生、いまは朝読の時間ですけど」

朝読とは、朝の読書の時間だ。
予鈴が鳴ってから8時35分まで、毎日静かに読書という決まりがある。

「いいから、しまえと言ってるだろう!!!!」

うるさいカバの怒鳴り声に、クラスメイトはしぶしぶ本をしまう。

「じつは今日、おれのくつばこに大量のクモが入っていた。犯人はこのクラスじゃないかもしれんが、やったものは正直に手を上げてくれ」

そう言って教室全体を見渡す。

手をあげるものもいなければ、目をあわせるものすらいない。
目があうと、「おまえだろ」と犯人扱いされるのは目に見えてるからだ。
もちろん、間宮もだ。

沈黙が続く中、授業開始の鐘が学校全体をつつんだ。

「伊藤先生。そのくらいにして、授業に行かないと・・・」
4組の担任の南が後ろのドアから顔をのぞかせて控えめに言う。
「ですが、南先生・・・・」
「2組の子が犯人と決まっているわけじゃないでしょう」

南のことばに、カバはしぶしぶと教室から出て行った。

「今日の放課後、第二作戦実行だ」

川嶋がやっと振り向いて、ニンと笑った。