いつもはなんとも思わない電話音が、今はやけにうるさく感じる。

それに、家族は誰も出ない。
これは、ケイタに出ろといっているようなものだ。

時計を見ると、夜中の2時だ。

ケイタはしぶしぶ、重いからだを引きずって電話の前にきた。

受話器に手をかけた瞬間、とんでもない不安におそわれた。
どうしてだか分からない。

ただ、身体がこわばり、電話にでることを拒否しているようだった。

―早く出なければ切れてしまう。


そう思い、バッと受話器をとった。



「はい、間宮ですが・・・」
『間宮!?』
「え、ゆりか?」

予想もしていなかった人物に、ケイタは驚いた。

『間宮、落ち着いて聞いてね・・・』

その声は、泣くのをこらえているようだった。

『いま、うちに電話があって・・・上野が交通事故にあったんだって・・・』