桃色アルバム

「おっす」

クラスメイトがまだひとりもいない教室で、じっとしてはいられずに廊下へでると上野がむこうからやってきた。

「アレはどうだ?」
「大勢でいったら怪しまれるから、渡部がいま入れにいってる」

そう言うと、職員玄関のほうを見た。
ちょうど渡部が走ってくるところだった。

「バレなかったか?」
「バッチリ」
息を荒らしながら渡部がぐっと親指をつきだす。

「クモなんて、どうやって集めたんだ?」
「カンタンだよ。おれたちの秘密基地、あっこにいくらでもいるぜ」

「ええっ、クモなんているの!?」

甲高い声の響いたほうを見ると、くつばこの前でゆりかが信じられないという顔でたっていた。
その横にはさとこもいる。

「ゆりか、クモ苦手なのかよ」
「クモだけじゃないさ。虫はなんでもきらいだよ、ゆりかは」
さとこがゆりかの頭をぽんぽんとなでながら言う。

「それにしてもみんな来るのはやいね」
ゆりかがぐるりとみんなを見た。
「川嶋と崎野がまだきてないみたいだぜ」
渡部がわらわらと生徒が入ってくるくつばこのほうへ首をのばしながら言った。


「そういえば・・・おそいな」
「あたしなんて興奮して眠れなかったよ。いつもよりはやくきちゃった」
へへ、と笑うさとこに、「おれも」「わたしも」という声があがる。

「・・・・・・あれ、間宮くんじゃない?」
正面を見ると、クラスの女子がひそひそとこちらを見て話していた。

「うそ、なんかめちゃしゃべってない?」
「えー、あの誰とも話さない人が?しんじらんない」
3人とも眉をよせて変なものでも見るような目つきをしている。


・・・・・いやだな

ケイタは気分が悪くなった。

どうしてこんなにも女子は陰口が多いのだろう・・・
見過ごそうとするが、その女子のまわりに人がまた集まる。

陰口が、はっきり耳にとどくほどおおきくなった。


「おい、おまえら」