「ああ、何か用事思い出したとかでこれなくなったんだって」

となりのクラスの崎野が言った。

「へえ、めずらしいな」
「で、これからどうする?」
「こんどは俺ん家こいよ。今日は親が出てていねえからさ」

上野が自分を指差しながら言った。


「じゃ、そうするか。そのまま行ってもいいのか?」
「ああ、家に昨日の残りもあるし、昼も俺ん家で食えよ」

そう言うと、上野が歩き出した。

ケイタもその後ろをついていくと、さとこが渡部に話してるのが聞こえた。

「ねえ、明日はゆりか来るよね」
「用事って、そう長引くようなもんじゃねえだろ。なんだよいきなり」
「ちょっと、ひっかかるんだよ。ま、あんたにあたしの気持ちは分かりゃしないか」
「どういう意味だよ」


そのやり取りを、ケイタはなんとなく聞いていた。
別に、ゆりかのことは気にもとめていない。
ただの用事なのだから。
それより、今は上野の家で何をしようかということしか頭になかった。