その日の夜、年也「前世療法良かった、スッキリした」麻衣「私も…」年也「阿部祐太郎が出来なかった分まで、生きなきゃなぁ」通晴「そうだな」年也「オレ<emj:158>…普通の家庭に生まれて良かった、今まで気づかなかったけど、自分の前世の家庭は荒れていたんだ、父親は暴力団の企業舎弟の役員でさ、覚醒剤の前科があってさ、前世の自分も覚醒剤での逮捕歴があったん」通晴「それは前世でのこと、お前は若山年也なんだから」年也「おやじ…」通晴「年也と麻衣は若山家の人間やで」年也は涙が出ていた、麻衣「お兄ちゃん、また泣いてる」年也「うん」麻衣「お兄ちゃんの泣いてる顔、何か?かわいい」年也「いや…それは」美佐恵「年也は泣き虫だけど、執念と努力は誰にも真似できないわ、年也の長所よ」年也「母さん<emj:160>」通晴「確かに、前世の祐太郎は習い始めてからデビューまで4年足らずだったしな」麻衣「お兄ちゃんは15年かかってる」通晴「正確には15年11ヶ月」年也「ほぼ16年だし」美佐恵「でもデビューした、舌を巻くわね」年也「歌手になる才能がなくても歌手になれるってことを立証しちゃったな」通晴が雑誌を持ってきた、麻衣「お兄ちゃん、一面に載ってる」通晴「書店の店員に、若山年也の親御さんですかって聞かれてさ、嬉しかった」年也「オレだし…」年也は照れていた、ページをめくると、家族と歩んだデビューまでの激闘5830日と大きく書いてあった、通晴「すごいな」美佐恵「これからも大変だけど」年也「うん、新曲作りとか、取材、コンサート、CD作りもあるよ」麻衣「歌手って、売れると収入とかすごいって」通晴「確かに」年也「マネージャーから今年で2500万円くらいって聞いてるよ」通晴「オレの4年分の給料だし」年也「雑誌やテレビ取材ではお金のことは一切触れてないよ、余り話さないで」通晴「確かに、世の中物騒だしな」年也「明日は昼からテレビ取材あるよ、家族も取材したいって話があったよ」通晴「オレ出たい」年也「いいよ…」美佐恵「あなた、目立ちがりやなんだから」夜、年也は筋トレを終えて、入浴を済ませる、年也が着替えていると、麻衣「開けていい?歯磨き」年也「いいよ…」麻衣がドアを開けた、麻衣「お兄ちゃん」年也「パンツはいてるから大丈夫だけど」麻衣「ボクサーパンツ1枚はちょっと、しかも赤だし」麻衣「まぁ、トランクスはダサいけどね」年也は寝室へ、しばらくして麻衣が来た、年也「毎日、同じ部屋で寝てるやん」美佐恵「歌手デビューまでの5830日、今振り返るといろいろあったな」年也「うん…何度も挫折しそうになってさ、アタマんなか真っ白になってさ、何も考えずに必死だった、才能に溢れた前世阿部祐太郎との差12年の遠回りは無駄にならなかったと思ってる」麻衣「私の前世、理子は白血病だった、だから私、理子のように重い病気で苦しんでいる人を助けたい、東京大学の医学部に行きたいな、そこ受けるよ」道晴「マジ、東大の医学部って、超秀才のエリートだし」年也「麻衣、お前なら出来る」麻衣「ありがと」麻衣「お兄ちゃんも歌手でさらに上へ駆け上がって」年也「もちろん」