麻耶は目を閉じるとすぐに寝息をたてた。

と同時に玄関から音がした。

「ただいま。」

お父さんだ。

私は麻耶を起こさないように静かに台所へ向かった。

「おかえり。」

すると、お父さんは

「まだ起きてたのか。早く寝ないとだめだろう。」

と、言った。

「はい。」

昔なら素直に、お父さんに会うためだと言ったかもしれない。

でも、今の私には黙ってオムライスを暖めるしかなかった。

しばらくすると、お母さんも帰ってきた。

お母さんはまず、麻耶のところへ行った。

麻耶が部屋にいないと気付くと、血相をかえて、

「結衣!麻耶は!?部屋にいないの!」

と叫んだ。

「私の部屋で寝てるよ。」

「そう……。これ、麻耶が書いたの?上手!」

安心したのか、オムライスの「ママ」と書いてあるのを、嬉しそうに眺めた。

「そうだね。」

私のオムライス…美味しい?

その言葉も出なかった。

洗い物を済ませると、私は麻耶の隣で眠った。