「夏海、結婚しないか?」私は裕翔にそう言われた。
~ 今から12年前の私の誕生日の日に、裕翔とであった。あの時はそれが運命の出会いだとも知らずに無邪気に笑って過ごしていた。
裕翔のお父さんは一流企業の会長さんで、お母さんは資産家の娘で、裕翔のお姉さんは、○○大学の法学部に在籍する人で
裕翔は立派な家柄の、長男。
それに比べ私の家族は、父がいて母がいて弟が二人いる。ごくごく平凡な家庭の長女である。私が最も自慢できるところは家族の仲が良いことである。ただ、私には先天性の心臓疾患があることで、昔から入退院を繰り返していた。
裕翔と、 出会ったのは私が病院から退院してきた日のことだった。隣の大きな家に誰かが引っ越してきたのだ。そこには世間一般で言われるイケメンの部類の人こそ、裕翔だった。
引っ越しの挨拶のため家族そろって近所の家を回っていた。10分ぐらいたって、裕翔たち家族が私の家にきた。
ピンポーン!
「初めまして、隣に引っ越して来ました神谷と申します。これから何かとお世話になるかと思いますのでよろしくお願いします。私の息子の裕翔と申します。お話を近所の方からお聞きしまして、娘さんと同い年だと伺いました。」
「そうでしたか。はじめまして。一之瀬です。こちらこそよろしくお願いします。娘は生まれつき心臓の調子が悪くて学校に行ける機会が少ないので、こちらの方が分からないことも多いと思います。今朝も病院を退院したばかりなのです。」
「そうですか。お大事になさってください。勉強でお困りでしたら裕翔や、姉の美沙愛がおてつだいします。裕翔は、人見知りがあるのですが、お嬢さんには、人見知りしないので、仲良くしていただけるとありがたいのです。」
「こちらこそ。よろしくお願いします。夏海のことよろしくね裕翔君。」 
 それから数日たった日のこと。
「夏海、一緒に、学校にいかない?」
裕翔がそう声をかけてきた。
「いいよ。ってか、呼び捨てにしない でよ。」
「いいだろ。オレたち友達なんだから。」
「まあ、いいか。早く行かないと遅刻するよ。」
「走るな!身体に悪いだろ。」
「ありがと。心配してくれて。」
 「じゃあ、いこうか。」