俺はみずほに心を残したまま出発していた。
だからなのか。あいつの唇の温もりが……
まだ……俺の唇を覆っている。


あいつの悪戯っぽい仕草の裏に隠された、俺への恋心が痛かった。


(俺にそんな価値があるのだろうか? こんなに愛されても良いのだろうか?)

ずっとそう思っていた。
だからこそ真のエースになろうとしていたんだ。


俺の方から惚れたのに、今じゃみずほに先を越された感がある。
サッカーとアルバイトて忙しい俺に、親身になって勉強を教えたりしてくれた。
みずほは俺にとって掛け替えのないパートナーになるはずだった。


(あの時。何かがあったと何故思わなかったんだ。みずほはあんなに必死に俺を見つめていたのに!! もしかしたら俺に助けを求めいたのかもしれないのに……何故あの時気付かなかったんだ!!)

俺は自分自身に怒りの矛先を向けていた。




 (だから自殺なんて有り得ない! そう思わせてくれ。きっと事故だ! あいつが自殺することだけは、絶対にない……あいつが俺に何も言わないで突然逝くはずがない! 俺を残して逝くはずがないんだ!!)


あいつとの思い出が浮かんでくる。
どうしようもなく愛しくなる。
あいつの存在がこの世から消える……
そんなこと……
あってたまるか!




 (もしかしたら殺し?)

そんな疑問がよぎる。


実は俺……
叔父さんの経営している探偵事務所で、学校にも恋人にも内緒でアルバイトしている。
だからそんな考えが浮かぶのだろうか?


(もしそうだとしたら、犯人は誰だ?)

俺は遣ってはいけないこと思いつつ、一人一人の同級生の顔を思い出していた。


(同級生か? それとも……)

脳みそバーンと遣られた俺は、何が何だか解らず、ただがむしゃらに学校へと急いだ。