荻野…昨日優華が言ってた荻さん…?


前にも会ったことがあるから、私の事を知っているから、ここに来てくれたのよね。


ただ、私が覚えていないだけで…。


「荻野さん、この花とても綺麗だわ。ありがとう。」


「…ごめん」


「え?」


荻野さんが突然言葉をはいた。


「…他にもバラとかあったんだけど…」


「そんなことないわ。クロッカスの花でしょう?私知ってる。」


紫色のクロッカスの花弁を指で撫でる。


花束をくれた荻野さんにそっと目線を向けて見てみると、荻野さんは真っ直ぐ私を見ていた。


悲しそうな、切ない瞳でこちらを眺めている。