コツン、コツンと靴の音が聞こえてくる。


そして、靴の音は私の病室のドアの前でピタリと止まった。



――コンコン



「…どうぞ?」


なかなか入ってこないので声を掛けてみるとゆっくりとドアが開き、見知らぬ男の人が綺麗な花束を持ってこちらに向かってきた。


微笑む事など一切せず、俯く立ち姿。


その人は無言で私の膝元に花束を置いた。



とっても綺麗なその花はクロッカスだった。