私は思い切って話し掛けてしまった。


『ねぇ、この匂いはあなた?』


私に気づいたその人はビクッとした様子で振り向いた。


『え?俺?ごめん嫌なら場所変える…―』


気を使って立ち上がろうとしたその人のシャツをとっさに掴んだ。

『ううん!まって、とても懐かしい匂いがしたの。』


先走って言ってしまった。
自分が今そう感じてる事をはっきりと。

『え?』

その人は戸惑った顔をした。

当たり前、その人に変だと思われたはず。


それなのに…。