エレベーターを十三階で下りた僕は、絨毯の上を歩いていた。赤と紫が交互に染められた絨毯だった。どこかのホテルのような建物の中にいることが推察できたが、全くもって要領を得ない。たくさんの部屋があり、もちろんたくさんの扉があった。扉にはルームナンバーが印字されていた。数字の場合もあり判別できない文字が印字されているのもあった。僕は無限めいた先の見えない絨毯の上をシルエット女性と歩き、これからどうなるのだろう、と思案した。考えるのは好きだった。
「考え事をしてるときの男の人の横顔が好きなの」
 昔、好きだった人に言われた気がする。
「なんで?」
「知的に見えるからよ」
「じゃあ、どうかな」
 僕は横顔を向けた。