そんなことはお構いなし、猛スピードでBMWは加速してくる。ああ、このまま私はここで轢き殺されるのだな、と思った時に、右頬に違和感を感じた。なんだろう、異物めいたものがある。鏡がないからわからない。だけど、今この瞬間に、そんなこと、み気を取られている場合ではない。車が私に衝突するかもしれないのだ。
 私は右手を上げた。
 すると、どうだろう。
 車は徐々に減速し、フトンガラスに光が反射した。ブレーキ音がしたのかもわからない。滑らかでテクニカルなブレーキングだった。運転の技術を図る上では、ブレーキ技術を私は重要視する。