あっ、雑念というのは深い記憶を呼び起こす。スカーフを巻いたインテリ男のキザなセリフにほだされ(といっても若気のいたりがもたらした悲劇)付き合ったはいいが、計算上三股をかけられ、私は三番目の女だったという屈辱。バーで飲み、『君の傘の柄をコツコツと店内に響かせる音色が好きだ』という一言から出会いは始まったが、今思えば私を褒めているといよりは傘を褒めているじゃない、という悔しさと自分の愚かさを呪わざるをえない。それでいて一杯奢るよ、と男はいっときながら完全に(完全がこの世にあるのならば)酩酊状態だった私がお会計しなかったっけ?ああ、わからない。そんな些細なことで腹が立つなんて私の器ってそんなに小さかったけ?まあ、何事も時と場合によると思うの。これがメキシコ国境付近でゴミを漁っている少年少女だったら、奢らせて、またはたかって当然、だと私だったら思う。雑念って、本当に読んで字の如く。時間の無駄。