Y字路の分岐手前に緑色の帽子を被り左頬にホクロがある小人がいた。童話に出てきそうな小人。目がでかく体が小さい。銅像のようでもあるが瞬きをしている時点で、生、はあるのだろう。喋るのだろうか。声を掛けた方がいいのか。難題は山積みであり普段シンプルに考えられることも状況がそうはさしてくれない。
 Y字路。
 曇天模様。
 静謐な空間。
 緑色の帽子を被った小人。
「選択肢が二つ現れたら一つを選ばなければいけないよ。ここの掟だよ」
 小人が喋った。見た目に反して低い声で。
「それはわかるわ。でも、どちらにいけばいいかわからないの」
「どちらを選んでも行き着く先は一緒だよ」
「行き着く先は一緒」
 私は呪文のように小人の言葉を繰り返した。