「お待たせアオイ君」
 思考の中断というのは女性の声で寸断された。男が論理的な生き物なら女は感覚的。まあ、もちろん例外もあるが。目の前には、キャンパス内にいたジャケットを羽織った鈴木はいなかった。アオイの知らない鈴木がいた。ドレスコーデが様になり、肩口は肌が露出していた。髪の毛はアップにし、今からお得意様と○○○なのと言われても誰も否定はしない妖艶さがあった。女という生き物の容姿は時系列順に並べることは容易なのだが、いかんせん変化が著しく、株価の変動より予測が難しい。当然、嬉しい誤算もあれば、悲しい誤算もある。おそらく中村にとっては前者だろう、ことは彼の鼻の膨らみを見れば判断は難しくない。