都内某所で行われる井上ユミのシークレッットライブはMTVアンプラクドのような会場だった。こじんまりとしていて壁には有名なアーティストのサインや著名人の顔写真と会場のオーナーらしき人物の写真が飾られていた。会場にはテレビでよく見かける顔が見受けられた。アオイはクラフトビールをバーカウンターで頼み、一気に飲み干した。さらにもう一杯。にいちゃんいける口だね、と髭を生やしたバーテンに言われ、「ぼちぼちですね」と言い放つ。中村と鈴木はまだ来ていなかった。アオイは周囲を見渡した。愛想笑いを振りかざす経済人や化粧を塗りだくった落ち目の女優。ここにいるアオイの存在は誰にも見咎めらず、間違いな気がしてきた。限られた者の限られた空間は否めない。ここは三十階建てのビルの十五階に位置していた。アオイは最近見る夢がある。同じエレベーター、または違うエレベーターに何度も、何度も乗り、十三階まで行く。そして、誰か、に招かれる。今日も見た。昨日も見た。そもそもいつから夢を見たのだろう。