カナエは気付いた。そして、なぜ気づかなかったのだろう。男の隣で女が寝ていた。
「ねえ。そういえば、なんで男のマンションがここってわかったんだっけ?」
 カナエは冷静に女に尋ねた。
 女はブルブルと震えながら。「あなたが、『思い出したわ。アオイよ』って、言ったのよ」
 え、とカナエは頭が痛くなり、女の顔がおぼろげになってきた。でも、その顔こそ本来の彼女であり、その彼女の名前はなんだっけ、ああ、ああ、そうだ。
 井上ユミ。
 じゃあ、私は?