「ジャズピアニスト井上ユミのシークレットライブよ」
 鈴木が応えた。おそらく鈴木のコネだろう。
「井上ユミのピアノが聞けるのか」
 アオイは空を見上げた。やはり雲は一つもなかった。
「だから、アオイ。泣け」
 中村はいった。
「仕方ねえなあ」とアオイはポケットから目薬を取り出し、一滴、二滴と滴を目元に垂らした。
「幼稚園児かよ」
 と中村は大きい口と大きな声でいった。
「せめて小学生にしましょう」
 なんの慰めにもならない言葉を鈴木は放った。
 じゃあ、夜の八時な、と中村がその場を仕切り、お開きになった。