私の歩くスピードを速めた。電線したストッキングを履き替えるように。風を感じた先に橙色の灯りが漏れていた。扉が少し開いていた。
 私は忍び足になり、音を立てず、扉の隙間を覗こうと前かがみになり、些細な音も漏らさず耳を立てた。
 ふーというため息が漏れ聞こえた。
 誰かがいる。
 ため息の音質からして男のようだ。
 私は意を決し、背筋を伸ばし、扉に手を掛け、部屋の中に入った。