今しがた思い描いた三単語は、私にとって重要なキーになり得る。頭の片隅にあるが細部までは思い出せない。思い出さなければ私にとっては大いなる損失のような気がした。
 風。
 顔に風を感じた。春風のような生暖かさ。春は記憶をふと想起させやすい。いつでも春には出会いがあり別れがあった。春は人を魅力にさせ、夏よりもどこか人の気持ちを軽やかにさせる。
 私にとって春はなんだったのだろう。
 風が呼んでいる。
 呼んでいる先に、私の待つものがあると思った。