「あなたのことを私は知ってるんじゃないかなって」
 うんうん、と男は頷いた。「入れ物は一緒でも、中身は違います。あなたが知っている人かもしれないですが、もう一度言います。中身が違います」
「人には二面性があるみたいに」
 私はふっと笑みをこぼした。男はなんの反応も示さなかった。
「二面性とは防具みたいなものです」
「防具?」
 男は、そうです。と深く頷いた。「表を見せといて本来の自分、すなわち弱い自我を覆い隠しているのです」
「あなたの解釈だと、普段は攻撃的で明るい人間の裏は弱くも脆く、普段は気の弱そうな人間の裏は非常に意志が強固。そんな風に聞こえるんだけど」
 私はいった。