「ボタンを押してください」
 男はいった。
「何階でもいいの?」
「答えは決まっているはずです」
 男は全てを見透かしたような声を放った。
 私は階数ボタンに近づき、13、と印字されたボタンを押した。
 ボタンを押したが男は何も言わなかった。だが、うんうん、と頷いていた。奇妙で不快だった。
 エレベーターは動き出した。ゆっくりと意志を持ってるかのように。