「意志、ですよ。あなたの意志。忘れかけていた意志。人は迷い込むと得てしてどこかに逃げてします。夢なのか現実なのか。時にわからなくなる時があるでしょう?違いますか」
「突然そんなことを言われてわかりません」
「キャラメルとガムはどちらが好きですか?」
「ガムです」
「そうなんです。成分は似ているのに、ガムが圧倒的に指示を得ます。なぜだかわかりますか?」
「わかりません」
 男は頷いた。想定した門答集の一つなのかもしれない。「単純ですよ。ええ、単純ですよ。残るからです」
「残る?」
「ここはそういう場所です。逃げ込めば見つけなければならない。意識の深い部分。そう思っていてください」