「どういった人がこの館に住んでるの?」
 私は訊いた。
「それはあなたが一番ご存知ではないでしょうか」
「ご存知」
 私は繰り返した。
「そうですとも。『イシノヤカタ』は、あなたでありあなたではない。まあ、説明するより実際に入ってみた方が実感が湧くかもしれません」
「体験と経験」
「ご名答。これに勝る妙薬はございません。逃げか攻め、どちらを選択しても、長期的には大差はないのです。人は短略的に判断します。短期情報を重要視します。なぜだかわかりますか?」