どんな女と唇を重ね合わせるよりも、満たされた気持ちになるのはなぜだろう。やはり井上ユミだからだろうか。昨日まで遠い存在であり、雲の上の存在だった人物が、アオイの家に泊まり、アオイの横にいて手を繋ぎ、アオイの唇に触れた。
 これは夢だろうか。
 頬をつねり、捻った。
 目の前に桜が広がり、光景は一緒だ。
 夢ではなく現実。
 隣を見た。井上ユミがいた。
「屋台があるね。お酒も買って、お花見だね」
 井上ユミは屋台を指差した。