「なんでいきなり横断歩道の真ん中で止まるかな」
「手を握られたのって久しぶり」
 井上ユミの表情はタンポポの綿毛のように柔らかかった。着ているワンピースと統制がとれていて晴れやかな景色に溶け込んでいた。
 なので、横断歩道で止まろうが、たとえ車が往来しようがどうでもよくなった。アオイは仕方なく、井上ユミの手を握るではなく、繋いだ。
 そして、二人は走った。
 ああ、焼き鳥食べたい、という井上ユミの声を無視して走った。
 他の通行人も、なんで走ってるんだ、とか、さっき横断歩道で止まってなかったか、とか、瞬間移動カップル、というなんとも興味深い言葉がアオイの耳に届いた。