アオイの目の前には涼しい顔をしタンクトップ一枚の井上ユミがいた。すっぴんだった。化粧をしてない彼女は同級生にも見え、触れてはいけないガラス細工のように繊細な顔立ちだった。
「朝はびっくりしたでしょ?」
 井上ユミはコーヒーに角砂糖を二個入れ、クリームを一滴垂らした。
「この家は・・・・・・」
 僕の家なんだけど、と続けようと思ったアオイの言葉を遮るように、
「ホテルを予約し忘れちゃって」
 と井上ユミは舌をペコっと出して、その仕草がアオイの心をざわつかせ何もいえなくなった。